コロナウイルスはどのように命を奪うか?1/5

コロナウイルスはどのように命を奪うか?
~脳から足先まで全身を残忍に荒らし回る足どりを臨床医らが描きだす~

 

=「ヒュッテ・はなこ」コメント=

新型コロナウイルスについて、現状判明している症状やその原因についての概観記事の和訳です。長い記事ですので、5回に分けて掲載します。

<原文タイトル>

www.sciencemag.org
<原文掲載日>
2020年4月17日6:45PM (更新4月20日12:25PM)


最近のとある一日、20床規模の集中治療ユニットを回診する中で、ジョシュア デンソン医師は痙攣を起こしている患者2名、呼吸不全を起こしている人多数、腎臓機能が危険なまでに悪化している人多数を診療した。その数日前には、彼のチームが心停止した若い女性患者の蘇生を試みたが失敗したため、回診を中断しなければならなかった。これらの患者たちには一つ共通点があった、と肺および救急医療を専門とするテュレーン大学医学部のデンソン医師はいう。「彼らはみなコロナウイルス陽性患者である。」

 

COVID-19陽性の事例が世界中で220万例、死亡例が15万例を超える中、臨床医や病理医たちは、コロナウイルスが体内を駆け抜ける過程でどのようなダメージがあるか、解釈に奮闘している。肺が爆心地であるものの、心臓、血管、腎臓、腸、および脳を含む多臓器に影響を及ぼすということが分かりつつある。

 

「(この病気は)体内のほぼすべての部位を攻撃する可能性があり、壊滅的な結果をもたらす」と、イェール大学およびイェール大学ニューヘブン病院の心臓専門医 ハーラン クルムホルツ氏はいう。彼はCOVID-19に関する臨床データを集積する複数の試みを先導している人物である。「その凶暴さは目を見張るものであり、屈辱的なものである。」

 

ウイルスの凶暴な行動を解釈することで、治療の最前線にいる医師が、致命的な、時として不可解な病状に至っている感染者の一部を救う手助けとなるだろう。血液凝固という、最近みえてきた危険な傾向は、軽症例を致命的な緊急事態へと変えてしまうものなのだろうか?最悪化の症例で免疫システムの過剰な反応がみられることは、免疫反応を抑制する薬での治療が有効だと示唆しているのか?呼吸困難を訴えていないにも関わらず血中酸素濃度が驚異的に低い患者がいると、複数の臨床医から報告されている事態はどのように説明がつくのか?「治療法について考えるにあたり、システム的な思考でアプローチすることが有益だろう」と肺の集中治療医であるペンシルバニア大学病院(HUP) ニラム マンガルムルティ氏はいう。

 

特に重症患者のおよそ5%にみられた、ウイルスが体内中の細胞を攻撃する手順について、現在急速に分かってきていることの概観をここに記載する。今や週に1000本以上の論文や報告書が機関誌やプレプリントサーバーに流れ出てきているにも関わらず、このウイルスについてのはっきりとしたことはとらえられずにいる。このウイルスが、人類が今までにみてきたどの病原菌とも異なる動きをするためである。大規模で将来を見通した、統制のとれた研究はまだ、いま始まったところである。現状では研究者たちは、多くが急速に公開され査読されていない、小規模な実験結果や症例レポートから情報を引き出すしかない。「私たちはこの現象が進展するにあたり、非常に開かれた心を持ち続けなければならない」「私たちはまだ学んでいる途中なのです」と肝臓移植の専門でこれまでCOVID-19の治療にあたってきたラッシュ大学医療センターのナンシー リュウ氏はいう。

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