コロナウイルスはどのように命を奪うか?2/5

コロナウイルスはどのように命を奪うか?
~脳から足先まで全身を残忍に荒らし回る足どりを臨床医らが描きだす~

 

=「ヒュッテ・はなこ」コメント=

新型コロナウイルスについて、現状判明している症状やその原因についての概観記事の和訳です。長い記事ですので、5回に分けて掲載予定の2回目です。

<原文タイトル>

www.sciencemag.org
<原文掲載日>
2020年4月17日6:45PM (更新4月20日12:25PM)

 

コロナウイルスはどのように命を奪うか?1/5 - ヒュッテ・はなこのブログ



感染初期

 

SARS-CoV-2と呼ばれる新型のコロナウイルスに感染した患者からウイルスを含む飛沫が排出され、別の人が吸入した場合、鼻やのどからそのウイルスが体内に侵入する。ウェルカム サンガー研究所ほかの研究者たちによるプレプリントによると、鼻の内側に侵入口がある。鼻の内側の細胞にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と呼ばれる細胞表面受容体が数多く分布しているというのだ。ACE2は通常は血圧の制御を手助けしている。ウイルスはこの受容体に強要して体内に入ろうとするため、体全体の中でACE2が存在する組織が、感染に弱い組織となる。新型コロナウイルスは一旦体内に入ると、細胞の機構を乗っ取って自身のコピーを無数につくり、別の細胞を侵していく。

ウイルスが増殖するにつれ感染者は、特に感染後1週間ほどの間、大量のウイルスを放出する可能性がある。この時点では発症していないこともある。あるいは、発熱、から咳、のどの痛み、嗅覚・味覚障害、あるいは頭痛・からだの痛みの症状があらわれる。

免疫システムがこの初期段階でSARS-CoV-2ウイルスを撃退しないと、ウイルスは気管をくだり、致死的な状況になりうる肺を攻撃する。肺から枝分かれしている細くて長い呼吸樹の先端には肺胞という小さな気嚢がある。肺胞は一層の細胞におおわれており、ここにある細胞もまたACE2受容体を多く含んでいる。

通常、酸素は肺胞を通ってその気嚢を覆う毛細血管という細い血管へと入る。そして体内全体へと酸素が運ばれる。しかし、免疫システムが侵入者と戦う際には、その戦いのために健全な酸素の輸送が妨げられる。戦いの最前線にある白血球はケモカインという炎症分子を放出する。この炎症分子は次々と更なる免疫細胞を招集し、ウイルスに感染した細胞を攻撃する。その結果、体液と壊死した細胞が混ざった膿が生じる。これが肺炎の根本的な病理であり、関連症状として咳、発熱、浅く速い呼吸があらわれる(*英文本文には図あり)。COVID-19患者の中には、鼻プロングを通じて酸素を吸入するのみで治癒する患者もいる。

しかし悪化する患者もいて、多くの場合は突然、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症する。血中酸素濃度が激しく低下し、呼吸がますます困難になる。レントゲンとCTスキャンでは、肺が、本来酸素があって黒く写るべきところまで白く濁った部分に覆われて見える。一般的に、これらの患者は人工呼吸器を装着することとなる。多くは死亡する。解剖の結果をみると、肺胞には体液、白血球の細胞、粘液、および破壊された肺細胞の残骸が詰まっている。

 

hutte-hanako.hateblo.jp