COVID-19が恒久的にもたらす変化のすべて 1/4

COVID-19が恒久的にもたらす変化のすべて
~トップクラスの有識者30名による~

 

=「ヒュッテ・はなこ」コメント=

コロナ禍が将来の生活やビジネスに与える影響について、米国の有識者へのインタビュー記事の和訳です。4回に分けて掲載します。

<原文タイトル>

www.fastcompany.com



<原文掲載日>
2020年4月20日

COVID-19が恒久的にもたらす変化のすべて
~トップクラスの有識者30名による~

我々の生き方・働き方・考え方への、パンデミックによる永続的な影響について、WhatsApp社 ウィル キャスカート氏からAOL社 共同設立者スティーブ ケース氏まで、テクノロジー企業の経営者、投資家、およびアナリストたちが考察する。

コロナウイルスによる大規模な活動休止を強いられて4週間が経とうとしている。我々の多くは、この期間の大部分を、ウイルスにもたらされたライフスタイルの急激な変化に慣れるために費やしてきた。一方で我々は、この危機が終わる時について、また、その後の世界がどのようになるのか、考えはじめている。

そこで今、生活や仕事の様々な面において、このパンデミックで我々の考え方がどのように変わる可能性があるか、意見をまとめる良いタイミングといえる。経営者、投資家、およびアナリストたちに、それぞれの世界でどのような変化が起こると考えているか話をきいた。

 

COVID-19終息後について、少なくとも自身/自社の製品やアイデア、利益に関しては、当然、楽観的なコメントが多い。実際に、少なくとも何人かの考えは正しいだろう。一方で、コメントに共通して取り上げられたテーマは、ウイルスが世界の主要ニュースで無くなった後に控える、テクノロジー企業と消費者についての展望に関してだった。

 

以下のコメントは掲載にあたり編集されている。

在宅勤務が新常態となる

マシュー プリンス  (Cloudflare社 CEO)

パンデミックは結果として、在宅勤務についての、人類史上最大の効果的な実験となった。インターネット上では、トラフィック パターンの変化という形でその結果が明らかになっている。人々は子どものために、より多くのオンライン上の教育リソースにアクセスしている。また、同僚や友人、家族と従来とは異なる方法で連絡を取り合うようになっている。雇用者は、より動的な、クラウド ベースのテクノロジーを使用して、従業員のニーズにより柔軟に対応できるようになっている。この変化は、COVID-19の流行が落ち着いた後もずっと先まで続くのではないかと考えている。

 

ジャレッド スパタロ (Microsoft365社 副社長)

今般は人々の働き方および学び方のターニングポイントとして記憶されることになるだろう。中国が職場復帰へと舵取りをするなか、我々は未来を見るタイムマシンを持っているといえる。そしてその中国では、Microsoft Teamsの使用量の低下は見られない。人々はリモート ワークで経験し学んだことを「新しい日常」へと持ち帰っている。我々は今現在、持続的なリモート ワークについて多くを学んでいるのだ。

ジェフ リチャーズ (投資会社GGV Capital社 共同経営者)

 

私は例年、出張のために移動200,000マイル以上移動する。重役会議、面接、その他の重要会議をビデオチャットで行うことが正規化された今、私の移動量は減るだろうか。答えは分からないが、この行動変化はずっと継続していくと確信している。過去には、ビデオでの参加は会議等を「おざなりにしている」とみられていた。今やビデオは一般的に承認された参加方法となった。最終的には、法人旅行はまだ復活すると思う。顧客や役員候補者と話すにあたり、実際に会うことより良いことはないからである。しかし定例会議については、ビデオ会議がもっと増えるだろう。また、Zoomは企業から消費者まで、重大な変化をもたらした。5歳児から75歳まで、私の家族全員がZoomの使い方を知っている。これは画期的な出来事である。

 

ティム バハリン (Creative Strategies社 主席アナリスト)

最近CIOたちと話す機会があった。彼らは、スタッフの少なくとも一部が在宅勤務を行うことについて、だんだん快適になってきていると言っていた。2名のCIOは数字で示しさえした。25%にのぼるスタッフに在宅勤務をさせても良いと考えているというのだ。このことは、オフィス内の人数が減り、それに順じてオフィス空間の需要も減る可能性があることを意味する。これはオープン スペースな職場環境の消滅を示すと私は考えている。COVID-19の経験から、人々は何年にもわたって、ウイルスが拡散されやすいオープンオフィスで肩を並べて仕事をすることについて、以前より気にかけるようになるだろう。

エヴァ チェン (Trend Micro社 CEO)

COVID-19の経験は、新しい様式を取り入れて昔からの方法を修正する勇気を奮い起こさせる。結果として組織は、大きなオフィスを構えるという概念を捨て、複数のオフィス展開をする小都市型のモデルに戻り、在宅勤務が増えるだろう。さらには、会社の「本社」はクラウド上に存在するようになり、仮想クラウド上で企業データを守れるよう、より多様なエンドポイントに対応できるよう、データの保護および保管の方法を変化させていくだろう。

 

サンプリティ ガングリ (ソーシャル  ベンチャー企業 Arabella Advisors社 CEO)

 

我々は皆「BBCマン」になりつつある。 (*訳注: BBCニュースに自宅からリモート出演しているコメンテーターが、出演中、部屋に入ってくる子どもたちに邪魔をされる動画へのリンクあり。)  我々は皆、会議中、常に子どもや飼い犬に急かされているということである。我々は恐らく、オフィスで許容されることと家で許容されることの隔たりを越えただろう。こういったより個人的なひと時により、多くの点において、人間としてより深く意味深い接し方が可能になる。オフィスでの勤務が中心だった世界には、すぐには戻らないと思う。ゆえに、在宅とオフィスのどちらからの勤務にも対応する新しいビジネスの規範ができていくだろう。

 

ステーブ ケース (AOL社 共同創立者およびRevolution社 会長)

COVID-19のパンデミックは、事業家、投資家、また被雇用者をも含む人々に、沿岸部のテックハブ外でのチャンスについて考えるよう促すだろう。引越しを考えていた人々、ヘルスケアや食農などの国内各所に存在する分野に参入しようと考えていた人々、ライフスタイルを変えようと考えていた人々、または家族や友人の近くに居たいと考えていた人々は、この機会に新しい場所に移ろうと考える。このことで人材のブーメランを促進し、スタートアップの多い新興都市の発生を助長することとなるだろう。その上、この長期にわたる在宅勤務期間の結果としてリモートワークが妥当な手段として取り入れられるようになることで、この傾向は更に推し進められるだろう。

 

ヴィヴェック ラビサンカル (競技プログラミング プラットフォーム HackerRank社 CEOおよび共同創立者)

リモート ワークの常態化により、技術人材を遠隔で雇用することが常識となるだろう。このことは経費の面と人材確保の面の両方にとって有益である。企業は適切な人材を即時的に補充することができ、高賃金の技術職ポジションを各地の開発者用に空けることができる。我々はすでに、雇用の際に経歴よりスキルを優先する傾向の変化をみてきた。今、地理的要素とスキルに関しても、後者の優先へと変化していくだろう。そのことで人材プールは更に多様となり、ビジネスと経済は更に強くなるだろう。

 

AJ シェンカー (Everlaw社 CEOおよび共同創立者)

 

現代の勤務環境では、チャットのようなリアルタイムのコミュニケーション メディアによって、生活のパーソナルな部分と仕事の部分の境界を曖昧にする「常時ON」の心理状態が生み出されている。今現在のCOVID下の世の中では、その境界はかつてないほどに曖昧となり、物理的な隔ては皆無となっている。その結果、仕事への対応を期待されることに関する状況は、良い方向へと変化するだろう、と私は予言する。従業員思いの企業では、当然のことであるが、夕方以降の時間は最終的には家族や個人の時間へと戻るだろう。この変化は自動的には起こらない。考え方と方法の変化が必要である。


hutte-hanako.hateblo.jp

 

英国の研究者たちがワクチンの臨床試験を今週にも開始

コロナウィルス: 英国の研究者たちがワクチンの臨床試験を今週にも開始

 

=「ヒュッテ・はなこ」コメント=

新型コロナウイルスのワクチン開発についての動向に関する英国の記事です。

<原文タイトル>

www.euronews.com


<原文最終更新日>
2020年4月21日8:33PM 

 

英国はコロナウィルスに効用が期待できるワクチンの臨床試験の準備ができたと発表した。試験は早ければ今週にも始められるという。

マット ハンコック保健大臣は、木曜にも臨床試験を開始し、世界でまだ少数しか行われていない同様の試みの一つとなるだろう、と発表した。

同氏によると、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンはオックスフォード大学の研究者たちによって開発され、成功率は80パーセントと報告されているという。

ChAdOx1 nCoV-19ワクチンはチンパンジーのウイルスを使用して遺伝子学的な操作を行い、COVIDー19に感染させたものである。

ハンコック大臣は記者会見にて、このワクチンの効用は不確かなものであり、常時であればこの段階に達するまでに数年を要するものであると述べた。

試験の結果ワクチンのいずれかが安全で有効となった際には、人事を尽くして可能な限り早く、英国民に適用できるようにすると述べた。

現在世界の30以上の企業が、何万もの人命を奪ってきたこの病気に対するワクチンを開発しようと競っている。

ヨーロッパ内のより広域では、オランダがBCGワクチンを試すための人々を募っていると報告されている。このワクチンは結核予防のために、多くの学童に接種されてきたものである。

ドイツのキュアバック社は、m RNA(伝令RNA)を用いたワクチンの臨床試験を夏に開始するよう準備を進めているという。

インペリアル カレッジ ロンドンの科学者たちもRNAを用いたワクチンを開発し、同様の時期に臨床試験を始めると報告されている。

イタリアの新会社 タキス バイオテックはDNAワクチンの臨床試験を晩秋には始められると予測している。

WHOから出された共同声明において、ワクチンの開発に注力することは重要だと認めるが、時間がかかるだろうと世界中の研究者たちが述べている。

「我々研究者、医師、出資者、および製造業者は、WHOの取りまとめのもと、国際的な共同作業によってCOVIDー19ウイルスに対するワクチンが早く手配できるよう支援する。」

「一般に使用できるワクチンの開発には時間がかかるが、最終的にワクチンは、この世界規模の大流行を制御するのに役立つものとなるだろう。」

 

コロナウイルスはどのように命を奪うか?5/5

コロナウイルスはどのように命を奪うか?
~脳から足先まで全身を残忍に荒らし回る足どりを臨床医らが描きだす~

 

=「ヒュッテ・はなこ」コメント=

新型コロナウイルスについて、現状判明している症状やその原因についての概観記事の和訳です。長い記事ですので、5回に分けて掲載予定の最終回です。

<原文タイトル>

www.sciencemag.org
<原文掲載日>
2020年4月17日6:45PM (更新4月20日12:25PM)

 

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多数の戦場

これまで、肺の機能低下を助ける人工呼吸器が世界規模で不足する恐れが注目を集めてきた。別の器具、透析器に関してはさほどでもない。「肺機能が無事でも、腎不全で亡くなる恐れがある。」と、これまでに何千人ものCOVID-19患者を診てきたニューヨーク大学ランゴーン メディカルセンターの神経学者ジェニファー フロンテラ氏はいう。フロンテラ氏の病院では更なる患者に対応するため、別の器械を使用して透析を行う要綱を整えている。腎臓にもACE2受容体が豊富に存在し、ウイルスのターゲットとなるため、透析器が必要になると考えられる。

あるプレプリントによると、武漢での入院患者85名のうち27%は腎不全を起こしていたという。別の報告では、中国の湖北省および四川省のCOVID-19での入院患者200人近くのうち59%の尿中にタンパク質が、44%の尿中に血液が確認された。いずれも腎臓のダメージを意味するものである。同じ中国のプレプリントによると、急性腎障害(AKI)を発症しているCOVID-19患者は、発症していない患者に比べて死亡率が5倍以上であった。「肺が第一の戦場である。しかし、ウイルスの一部は腎臓を攻撃する可能性がある。そしてもし2つの部位が同時に攻撃された場合、それぞれの戦況は悪化する。」と、この研究の共著者であり、中国科学院 蘇州生物医学工程技術研究所の脳科学者 ホンボ ジア氏はいう。

ある研究では、解剖の結果、腎臓の電子顕微鏡像でウイルスの粒子が確認されており、ウイルスの直接的な攻撃を示唆している。しかし、腎臓の損傷は二次的なダメージだとも考えられる。人工呼吸器は腎臓へのダメージのリスクを高める。COVID-19患者に実験的に使用されているレミデシビル等の抗ウイルス混合物も同様である。サイトカインストームもまた、腎臓への血流を劇的に減らすため、多くの場合致命的なダメージをもたらす。「慢性的な腎臓の既往症があるために急性腎障害になるリスクが高い人々はかなり沢山いる。」とノースウェスト腎臓センターのチーフ医療責任者 スザンヌ ワトニック氏はいう。

脳への打撃

COVID-19患者の別の衝撃的な症状は脳と中枢神経系を中心としたものである。フロンテラ氏によると院内では、コロナウイルス患者の5%から10%に神経内科医の診察が必要とされているという。ただ、多くの患者は鎮静させられ呼吸器をつけているため、脳に症状がある患者数についてのこの数字は「おおまかにみた、最小数値だろう」という。

脳炎脳卒中、また、脳が外傷的な損傷をうけた際によく起こる、交感神経系の過活動が痙攣のような症状を起こす”交換神経ストーム"、といった症状を起こしている患者をフロンテラ氏はみてきた。COVID-19感染者の中には一時的に意識を失う人がいる。また、脳卒中を起こす人もいる。多くの患者は嗅覚がなくなると訴える。フロンテラ氏および他の医師たちは、酸素の貧窮を感じる脳幹の反射作用が感染によって失われるのではないかと考えている。このこともまた、血中酸素濃度が危機的に低いにも関わらず呼吸困難を訴えない患者がいるという報告事例の説明の一つとなる。

神経皮層および脳幹にはACE2受容体が分布している、とジョンホプキンス病院の集中治療医ロバート スティーブンス氏はいう。しかし、どのような状況下でウイルスが脳内に侵入して受容体と作用しあうのかは分かっていない。とはいえ、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行を引き起こしたコロナウイルスは神経に侵入し脳炎を起こすことがあった。このコロナウイルスは現在問題になっているウイルスの近しい従兄弟である。国際医学誌International Journal of Infectious Diseases掲載の4月3日付けのケーススタディで日本のチームが、髄膜炎および脳炎を発症したCOVID-19患者の脳脊髄液内に新型コロナウイルスの痕跡を認めたと報告した。このこともまた、このウイルスが中枢神経系に侵入できることを示している。

だがしかし、別の要素が脳にダメージを与えている可能性もある。例えば、サイトカインストームは脳腫脹を引き起こし、血液が凝固して血栓となる傾向は脳梗塞を引き起こす可能性がある。医療スタッフが救命措置に専念する中で、または咽頭反射のような神経学的な診察の過程で、あるいは患者を脳スキャンに運ぶ間にさえもウイルスを広げている可能性があるということを、推測を確信へと変えられるようにすることが現在直面している課題である。

ピッツバーグ大学医療センターの神経科シェリー チョウ氏は先月、既存患者から神経学的なデータを抽出するための世界規模の協会を立ち上げ、現在50施設が参加している。初期の目的は単純に、入院患者に神経学的な症状が広がっていることを明らかにし、その経過を記録することである。長期的には、チョウ氏やその同志たちは、スキャンデータや臨床検査結果その他のデータを集積し、脳を含む神経系へのウイルスの影響をより良く解釈することを目的としている。

チョウ氏は、可能性のある侵入経路として、鼻からさかのぼり嗅球を通って脳に到達するという経路を推測している。このことで嗅覚がなくなるという報告の説明がつく。「良い理屈のように聞こえる。」とチョウ氏はいう。「我々は実際に動き、この説を証明しなければならない。」

神経学的な症状のほとんどは「同僚同士の口伝えで報告される。」とチョウ氏は付け加える。「どの神経科医も、もちろん私自身も、自分たちが専門家だとは言えないでしょう。」

消化管への到達

3月のはじめ、ナイル川クルーズから帰国したミシガン州の71歳の女性に血性下痢、嘔吐、腹痛の症状が出ていた。医師たちは当初、サルモネラ菌のような、よくある食あたりを疑った。しかし咳の症状が出たため鼻腔の検体採取を行い、新型コロナウイルス陽性と判明した。消化器病学の専門誌 American Journal of Gastroenterology誌にオンライン投稿された論文によると、採便試料はRNAウイルス陽性を示し、内視鏡検査で腸の損傷が確認されて、胃腸部がコロナウイルスに感染していることを示したという。

この女性患者の事例は、新型コロナウイルスがその従兄弟であるSARSと同様に、ACE2受容体が豊富な下部消化管の内側に感染するということを示す多くの証拠例の1つに加えられる。感染患者から採取した採便試料の53%からRANウイルスが検出された。医学誌 Gastroenterology誌に印刷中の論文では、中国のチームがCOVID-19患者の生検の胃部、十二指腸、および直腸の細胞から蛋白質シェル構造体を発見したと報告されている。「ウイルスは確かに消化管内で複製すると思う。」とベイラー医科大学のウイルス学者 メアリー エステス氏はいう。

ロサンゼルスのシダーズ サイナイ医療センター所属でAmerican Journal of Gastroenterology誌の共同編集長のブレンナン シュピーゲル氏によると、最近の報告では、多めの報告で患者の半分、平均的には20%が下痢を経験すると示している。胃腸部の感染はCDC疾病管理予防センター作成のCOVID-19による症状のリストに記載されていないため、COVID-19の症例として検出されないことがある、とシュピーゲル氏たちはいう。「主な症状が発熱と下痢であれば、COVIDの検査をされることはないだろう。」とカルフォルニア北部のカイザーパーマネンテ所属でGastroenterology誌の共同編集者 ダグラス コーレイ氏はいう。

胃腸部にウイルスが存在するということは、排泄物を介してウイルスが移るという不安な可能性を生み出す。現状ではまだ、大便に含まれているのが完全強度で感染力をもったウイルスなのか、RNAとタンパク質だけなのか、ということは明らかになっていない。今のところ糞便感染が重要だという「証拠はない」と、アイオワ大学のコロナウイルスの専門家 スタンレイ パールマン氏はいう。CDC疾病管理予防センターによると、SARSおよび別のコロナウイルスの従兄弟的な存在であり危険な病気である中東呼吸器症候群の経験から、糞便感染のリスクは低いだろうと言われている。

この病の全身を通じての進軍は腸では終わらない。例えば、入院患者の三分の一に上る人々は目がピンク色で涙目になる結膜炎を発症する。ウイルスが直接目に入り込むかどうかは明らかにはなっていないのだが。また別の報告は肝臓のダメージを示唆する。中国の2つの医療センターに入院した患者の半数以上が、肝臓あるいは胆管の損傷を示す酵素の測定値を示した。しかし、複数の専門家たちがサイエンス誌に、ウイルスの直接の侵入が原因ではないと報告した。肝臓にダメージを与えるより現実的な要因としては、投薬の影響や免疫システムの過剰反応など、容体が悪化している体内で起こっている出来事が挙げられるという。

以上のCOVID-19が体に負わせる破壊の分布図はまだ、ほんのスケッチでしかない。ウイルスの到達する範囲や、ウイルスによって次々と起こる心臓血管および免疫システムの反応の全体像をはっきりさせるには、何年もかけて念入りに研究をする必要があるだろう。顕微鏡での組織検査から薬の臨床テストへと研究が急速に進む中で、世界を立ち止まらせたウイルスよりも策略に富んだ治療法が出てくることを期待する。